「最近、どうも世の中の動きが読めない…」
「今まで当たり前だったことが、通用しなくなってきた…」
経営者仲間との会話で、そんな不安を口にすることが増えていませんか?急激な円安、止まらない物価高、不安定な国際情勢。まるで、これまで私たちがプレーしてきたゲームのルールそのものが、根底から書き換えられようとしているかのようです。
40代の我々が事業を夢中で拡大してきたこの20〜30年間は、「グローバリズム」という一つの大きな潮流の上にありました。しかし、その潮流が今、終わりを告げようとしています。
本コラムでは、数々の企業の変革を支援してきた私たちが、今世界で何が起きているのか、そして、この大きな転換期を中小企業がどう乗り越え、むしろチャンスに変えていくべきなのか、具体的かつ着実なアクションを交えて本質を突いて解説します。
もう「知らない」では済まされない時代の到来です。この記事を読み終えた時、あなたは未来への羅針盤を手にしているはずです。
第1章:世界で今、何が起きているのか?終わる「安さ」の時代
結論から言えば、「安価な労働力と資源を求めて世界が一つになる」というグローバリズムの時代が終わり、世界がブロック化・自国第一主義へと大きく舵を切ったのです。世界は大きな「巻き戻し」の時代に入りました。
なぜ、そんなことが起きているのか。その背景を「数字」で見ていきましょう。
数字で見る「世界の分断」
これまで世界経済の成長を牽引してきたのは、米中両国の連携でした。しかし、その関係は決定的に変化しています。例えば、米国の対中輸入額を見てみましょう。
米国商務省によると、2018年にトランプ前政権が対中制裁関税を発動して以降、米国の輸入相手国に占める中国の割合は低下傾向にあります。2017年には21.6%で首位でしたが、2023年には13.9%まで低下し、メキシコに首位の座を明け渡しました。
これは単なる貿易摩擦ではありません。経済を武器に覇権を争う「経済安全保障」の時代の始まりを意味します。つまり、「どこから調達するか」が、単なるコストの問題ではなく、国家レベルの戦略問題になったのです。
この流れは、エネルギーや食料といった、事業の根幹をなす分野でより顕著になります。
- エネルギー: ロシアによるウクライナ侵攻以降、天然ガス価格は乱高下を続け、安定供給はもはや当たり前ではなくなりました。日本のエネルギー自給率はわずか13.3%(2022年度、参照:資源エネルギー庁)。エネルギーコストの上昇は、今後も経営に重くのしかかります。
- 食料: 日本の食料自給率はカロリーベースで38%(2022年度、参照:農林水産省)。異常気象や国際紛争によって、海外からの輸入が滞れば、私たちの食卓はもちろん、食品関連事業は壊滅的な打撃を受けます。
これまで私たちは、「必要なものは、世界中の安いところから買えばいい」と考えてきました。しかし、その前提が今、崩壊しているのです。