そろそろ暑くなってきた。

タイガーのかき氷機が復刻したのをご存知だろうか。
きょろちゃん」という、あの昭和の名機だ。
知らない人に説明する気はない。知っている人だけわかればいい。

おれはさっそく買った。
自分で氷を削る、あの感触がたまらない。
ふわふわの機械式より、少し粗くて、少し重い。
でもそこがいい。手間をかけた分だけ、うまい。

氷を削りながら、ふと思った。
「脱炭素って、ちゃんと説明できる人間、どれだけいるんだろう」と。

研修の場でも、同じ光景を何度も見てきた。
「大事だとは思っています」と言いながら、目が泳ぐ。
知っているようで、知らない。
それが正直なところだろう。

だから今日は、そこから始めよう。

脱炭素とは何か。小学生に説明できるか

難しい言葉は後回しにする。まず一言で言う。

脱炭素とは、CO₂を出す量を実質ゼロにすることだ。

「実質ゼロ」というのが味噌で、完全にゼロは現実的ではない。
出てしまったCO₂は、森林や技術で吸収・除去する。
排出と吸収を差し引きしてゼロにする、というのが正確な意味だ。

ただ、この解釈はどちらかと言うと「カーボンニュートラル」寄りだ。

正確には脱炭素とカーボンニュートラルの違いの理解が必要だが、今日のところはひとまずおいておこう。

なぜCO₂を減らさなければならないのか。
CO₂が増えると地球が温まる。温まると気候が変わる。
洪水・干ばつ・猛暑が激しくなり、農作物が育たなくなる。
海面が上がり、島が沈む。
「そのうち困る」ではなく、もう始まっている。

日本政府は2020年、こう宣言した。

「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」

環境省「2050年カーボンニュートラルの実現に向けて」

さらに、2030年には2013年比で46%削減という中間目標も設定している。

環境省「2030年度目標について」

「2050年」はまだ先のことのように聞こえるかもしれない。
だが、今から動かなければ間に合わない、という計算の上に、
この数字は置かれている。

あなたはすでに、ラッキーな立ち位置にいる

ここからが、本当に言いたいことだ。

日本には約360万社の企業がある。
そのうち、中小・零細企業が全体の99%以上を占める。

中小企業庁「2023年版中小企業白書」

私自身が中小企業の経営者であり、家業の中小製造業をサポートしている身ととしてあえて現実を直視する。

中小零細企業の経営者は正直だ。
「環境?そんな余裕はない。来月の売り上げが先決だ」と言う。
これは嘘でも言い訳でもない。純粋な現実だ。
まずは継続性を高め生き残ることに懸命な企業に、脱炭素を語る余白はない。

あなたはどうだろう。

盤石な大企業にお勤めのあなたの会社は、
すでにSDGsの取り組みをしているはずだ。
環境方針があり、省エネ目標があり、担当部署がある。
それを会社の経費の中で、仕事として動かせる立場にいる。

これは、当たり前ではない。

99%の企業がやれていないことを、
あなたはすでにやれる場所に立っている。

おれはそれを「ラッキー」と呼ぶ。
あなたの努力で掴んだ、立派な権利であり財産である「ラッキー」だ。

「世の中にとって良いこと」と「あなたのワクワク」は繋がっている

少し聞いてほしい。

「こんな地球になったらいいのに」と思ったことはないか。

海がきれいなままであってほしい。
子どもたちが外で遊べる気候であってほしい。
食べものが安心して食べられる世界であってほしい。

そのワクワクを、中小零細企業とあなたの会社、
どちらが仕事を通して実現できると思う?

答えは明らかだろう。

「良いことをしたい」という気持ちを持ちながら、
なぜか後回しにしている。
理由は単純で、「自分ごと」になっていないからだ。

会社がやっていることを、「自分がやっていること」に変える。
そこに気づくだけで、仕事の景色が変わる。

そしてそれは、地球のためだけではない。
脱炭素に本気で取り組む人材は、今、圧倒的に不足している。
あなたが動けば、評価される。
評価されれば、給与に反映される可能性がある。

地球のためになって、自分のためにもなる。
こんなに都合のいい話が、他にあるか。

「どっかの誰か」になる必要はない

研修の場で、おれはいつも同じことを言う。

「あなたはすでに財産を持っている」と。

世界を変えるヒーローになる必要はない。
どこかの有名な活動家になる必要もない。

あなたと、あなたの会社が、
すでにアドバンテージを持っている。

そのアドバンテージを、
「会社がやっていること」から「自分がやっていること」に変える。
それだけでいい。

脱炭素は、義務でも罰ゲームでもない。
すでに恵まれた立場にいるあなたが、
その立場を使い切るかどうか、という話だ。

後回しにする理由が、おれにはわからない。


氷を削り終わったかき氷に、シロップの代わりにかけるのはブルーキュラソーだ。

昭和の夏は、手間をかけることを惜しまなかった。
脱炭素も同じだと、おれは思っている。
面倒くさいからやらないのではなく、
やる価値があるからやる。

あなたはもう、持っている。あとは、気づくだけだ。

Q. 脱炭素とカーボンニュートラルは何が違いますか?

A. 混同されがちですが、厳密には異なります。脱炭素はCO₂の排出量そのものをゼロに近づけることを指します。一方カーボンニュートラルは、排出してしまった温室効果ガスを森林吸収や技術で相殺し「実質ゼロ」にする概念です。対象範囲も異なり、脱炭素がCO₂に焦点を当てるのに対し、カーボンニュートラルはメタンやフロンガスを含む温室効果ガス全体が対象です。「脱炭素経営」「脱炭素化」といった使われ方をする場合は、カーボンニュートラル達成に向けた取り組みの意味で使われることが多いです。

Q. 大企業の社員が脱炭素に取り組むメリットは何ですか?

A. 会社がすでに環境への取り組みを経費内で実行できる環境にあるため、中小零細企業と比べて圧倒的なアドバンテージがあります。自分ごととして動ける人材は社内評価が上がり、給与や昇進にも直結する可能性があります。

Q. 脱炭素の取り組みを「自分ごと」にするにはどうすればいいですか?

A. 会社がやっていることを「自分がやっていること」に変える意識が出発点です。「こんな地球になったらいいのに」というワクワク感を、あなたが勤める会社の業務の中で実現できると気づいたとき、脱炭素は義務から自分の仕事に変わります。