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40代経営者のためのSDGsと脱炭素:会社の利益に変える経営戦略はじめに

fukunaga

株式会社ジョブオール代表取締役。脱炭素カードゲーム開催数日本一のファシリテーター。全国で講演活動中。ユニークな中小零細企業サービスをテレビ取材で売上アップ、中小企業のメディア露出戦略が得意。20代はIT起業、30代は家業の製造業DX化、40代は経済団体で地域経済に貢献。学生時代はバンドマン。趣味はランニング、2025年12月フルマラソンチャレンジ。


経営に活かすには何が必要か?

では、このような大きなパラダイムシフトの中で、中小企業がSDGsと脱炭素を経営にどう活かせば良いのでしょうか。必要なのは、単なる「対応」ではなく、未来を見据えた「戦略的な経営判断」です。

1.経営層の意識変革とコミットメント

最も重要なのは、経営層、つまり社長である皆様自身の意識変革です。SDGsや脱炭素を「社会貢献のついで」「コスト増の原因」と捉えるのではなく、「企業価値向上」のための投資、そして「新たな成長機会」として捉える視点を持つことが肝要です。そして、その新たな視点と明確な意思を社内に示し、全社的な取り組みとして強力にコミットすることが不可欠です。トップの強いリーダーシップがなければ、形だけの取り組みに終わりかねません。

2.自社の現状把握と目標設定

まずは、自社が現在、どのような社会課題に影響を与え、またどのようなリスクを抱えているのかを客観的に把握することから始めます。例えば、CO2排出量(電力消費量、燃料使用量などから算出)、廃棄物の発生量、水の使用量、サプライチェーンにおける人権問題への配慮、社員の多様性、働きがいに関する現状など、定量・定性の両面から現状を把握します。

その上で、自社の事業特性や強み、既存のサプライチェーンなどを深く分析し、SDGsの17の目標の中から、特に貢献できる目標や、リスクを低減できる目標を特定します。そして、具体的な目標を設定し、可能な限り数値目標を掲げることで、進捗を客観的に評価し、PDCAサイクルを回せるようにします。例えば、「2030年までにCO2排出量を〇〇%削減する」「製品製造における水使用量を〇〇%削減する」「女性管理職比率を〇〇%にする」といった具体的な目標です。

3.事業活動への統合とイノベーション

SDGsと脱炭素への取り組みは、従来の事業活動と切り離されたものではありません。むしろ、事業戦略、製品・サービス開発、生産プロセス、サプライチェーンマネジメント、マーケティング、人事戦略など、あらゆる企業活動の「軸」として統合していくことが求められます。

例えば、製品のライフサイクル全体での環境負荷低減(LCA:Life Cycle Assessment)を考慮した製品設計、再生可能エネルギーへの切り替えや省エネ設備の導入による生産プロセスの効率化、サプライヤー選定基準へのSDGs要素の組み込み(環境配慮、人権尊重など)、社員の多様性尊重と働きがいのある職場づくり(ワークライフバランス、スキルアップ支援など)などが挙げられます。この統合の過程で、既存のビジネスモデルやプロセスを見直し、新たな価値創造に繋がるイノベーションが生まれる可能性があります。

4.情報開示とステークホルダーとのコミュニケーション

取り組みを進めるだけでなく、その内容を積極的にステークホルダー(顧客、取引先、従業員、地域社会、金融機関、投資家など)に開示し、コミュニケーションを図ることも重要です。企業のウェブサイトでの情報公開、統合報告書の作成(規模に応じて)、SNSでの発信、地域イベントへの参加などを通じて、透明性のある情報開示を行うことは、企業の信頼性を高め、ブランディングを強化し、新たなビジネスチャンスを創出するきっかけにもなります。


経営を好転させる効果的な活動

具体的にどのような活動が、中小企業の経営を好転させることに繋がるのでしょうか。ここでは、中小企業でも実践しやすく、かつ経済的・社会的に効果が期待できる活動をいくつかご紹介します。

1.コスト削減と生産性向上

脱炭素の取り組みは、直接的にコスト削減と生産性向上に繋がることが多くあります。

  • エネルギーコストの削減: 照明のLED化、高効率な空調設備の導入、生産設備の最適化、デマンド監視システムの導入などは、電気料金の大幅な削減に直接貢献します。また、電力会社を再生可能エネルギー由来の電力供給会社へ切り替えることで、CO2排出量を実質ゼロにしながら、長期的なエネルギーコストの安定化を図ることも可能です。
  • 廃棄物削減と資源循環の推進: 製造工程における不良品の削減、廃棄物の分別徹底、リサイクルの推進、そして製品のリユース・リサイクルを考慮した設計は、廃棄物処理コストの削減だけでなく、新たな資源の調達コスト削減にも繋がります。例えば、製造工程で出る端材を別の製品の原料として活用したり、使用済み製品を回収して再資源化したりする「サーキュラーエコノミー(循環経済)」の考え方を取り入れることで、新たな収益源を生み出す可能性もあります。
  • 水の有効活用: 製造プロセスにおける水使用量の見直し、節水設備の導入、排水の再利用などは、水資源の保全に貢献するだけでなく、水道料金の削減にも繋がります。

これらは、環境負荷低減と同時に、企業のランニングコストを削減し、収益性を向上させるという、まさに「一石二鳥」の効果が期待できます。

2.企業イメージ向上とブランド価値確立

SDGsや脱炭素への積極的な取り組みは、企業のイメージアップに大きく貢献し、結果としてブランド価値の向上に繋がります。

  • 顧客からの評価向上と新たな顧客獲得: 環境意識や社会貢献意識の高い消費者や企業は、SDGsに配慮した製品やサービスを選ぶ傾向にあります。これは、既存顧客とのロイヤリティ強化だけでなく、新たな顧客層の獲得に繋がる強力な差別化要因となります。BtoB企業であれば、取引先からのSDGsへの取り組み要請に対応することで、取引拡大のチャンスにもなります。
  • 優秀な人材の確保と定着: 特にミレニアル世代やZ世代といった若い世代は、企業の社会貢献性や倫理観を重視し、SDGsに積極的に取り組む企業で働きたいと考える傾向が強いです。採用活動における企業の魅力向上は、人材不足が深刻化する現代において非常に重要であり、入社後のエンゲージメント向上、ひいては離職率の低下にも貢献します。
  • 金融機関からの評価と資金調達の優位性: ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の拡大に伴い、金融機関は企業のSDGsや脱炭素への取り組みを融資判断の重要な材料として重視するようになっています。取り組みを適切に進めることで、資金調達の選択肢が広がり、有利な条件での融資や投資を受ける可能性が高まります。

3.新規事業・新製品開発と市場機会の創出

社会課題の解決は、常に新たなビジネスチャンスの宝庫です。

  • 環境配慮型製品・サービスの開発: 脱炭素技術(省エネ技術、再生可能エネルギー関連技術など)や環境負荷の低い素材(バイオプラスチック、リサイクル素材など)を活用した新製品の開発、省エネコンサルティング、リサイクルシステムの構築、あるいはサプライチェーンにおける排出量算定サービスなど、SDGsの目標達成に貢献する製品やサービスは、新たな市場を創造します。
  • サプライチェーン全体の最適化と協業: サプライヤーとともにSDGsへの取り組みを進めることで、サプライチェーン全体のレジリエンス(回復力)を高め、リスクを低減することができます。また、サプライヤーとの共同開発や協業を通じて、新たな技術やビジネスモデルが生まれることもあります。これは、競争優位性を確立する上で非常に重要な要素となります。

例えば、食品廃棄物を削減するための新しい流通システムを構築したり、地域の間伐材を利用した新しい建材を開発したりするなど、自社の強みとSDGsの目標を掛け合わせることで、ユニークなビジネスが生まれる可能性があります。

4.従業員のエンゲージメント向上と組織力の強化

社員がSDGsへの取り組みに主体的に関わることで、仕事へのモチベーションやエンゲージメントが向上し、結果として組織全体の生産性や創造性が高まります。

  • 働きがいの向上: 企業が社会に貢献しているという意識は、社員の誇りや帰属意識を高め、エンゲージメントの向上、ひいては生産性向上にも繋がります。
  • チームワークとイノベーションの促進: 社内でのSDGsに関する勉強会やワークショップ、あるいはプロジェクトチームの立ち上げは、部門間の連携を深め、多様な意見を尊重する企業文化を醸成します。これにより、新たなアイデアや解決策が生まれやすくなり、組織全体の活性化に貢献します。

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株式会社ジョブオール代表取締役。脱炭素カードゲーム開催数日本一のファシリテーター。全国で講演活動中。ユニークな中小零細企業サービスをテレビ取材で売上アップ、中小企業のメディア露出戦略が得意。20代はIT起業、30代は家業の製造業DX化、40代は経済団体で地域経済に貢献。学生時代はバンドマン。趣味はランニング、2025年12月フルマラソンチャレンジ。

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