はじめに:「あの研修、意味あったの?」と言われないために

研修が終わったあと、参加者から「勉強になりました」という声は出る。しかし、1ヶ月後に職場で何かが変わっているかというと、よくわからない。

こうした「研修の手応えのなさ」は、脱炭素をテーマにした研修で特に起きやすい問題です。

株式会社FCEが2024年に実施した調査によれば、人材育成担当者が抱える悩みの第1位は「研修がその場限りのものになっていて、実務や実践に活かされていない」(40%)でした。 (出典:株式会社FCE「人材育成における悩みに関する調査レポート」2024年10月

また、厚生労働省の令和6年度「能力開発基本調査」では、能力開発や人材育成に関して何らかの問題があるとする事業所は79.9%に上ります。 (出典:厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査」

研修担当者がこれだけ多く「効果が出ていない」と感じている背景には、研修設計の構造的な問題があります。この記事では、脱炭素研修で起きやすい5つの失敗パターンとその原因を整理します。

失敗パターン① 「知識の詰め込み」で終わっている

最も多い失敗は、研修が「脱炭素の知識を教える場」になってしまっているケースです。

カーボンニュートラルの定義・パリ協定の内容・Scope1〜3の説明・自社の削減目標……これらを90分で講義形式で伝える研修は、受講者にとって「勉強になった」で終わります。

なぜか。知識は与えられるだけでは、行動を変えないからです。

脱炭素は「知っていること」と「自分の仕事と結びつけて考えられること」の間に大きな溝があります。その溝を埋めるための「考える時間」が設計されていない研修は、記憶から薄れるのが早い。

失敗パターン② 受講者が「他人事」のまま終わる

「地球温暖化は大変な問題だとわかった。でも、自分の日常業務には関係ない」

この感想を持って研修を終える社員は、想像以上に多くいます。

脱炭素というテーマは、どこか「社会全体の問題」「大きな企業の話」として受け止められやすい性質があります。受講者が自分の部署・自分の業務との接点を見つけられないまま研修が終わると、「当事者意識」は生まれません。

「自分がやるべきことは何か」を考える時間と問いが設計されていないと、この問題は避けられません。

失敗パターン③ 一方向の講義形式で受講者が受け身になる

講師が話し続け、受講者がメモを取る。この形式は、脱炭素のような複雑なテーマには特に向いていません。

人間の集中力には限界があります。90分の講義であれば、後半30分の記憶定着率は前半と比べて大きく落ちます。さらに、「聞く」という受動的な行為は、「考える・判断する」という能動的な行為に比べて、記憶への定着が浅いことが認知科学的にも示されています。

脱炭素というテーマはトレードオフの連続です。エネルギーコストを下げながら排出量も削減する、経済成長と環境配慮を両立させる。こうした「正解がない問い」を自分で考える経験がなければ、研修後に職場で判断を迫られたときに対応できません。

失敗パターン④ 研修後のフォローがない

エビングハウスの忘却曲線:復習なしの場合、1日後に約67%を忘れることを示すグラフ

研修当日は意欲が高まっても、職場に戻れば日常業務が待っています。フォローがなければ、研修で得た気づきは2週間もすれば薄れていきます。

「研修は当日だけ」という設計は、投資対効果の観点からも課題があります。研修に費やしたコスト・時間・担当者の工数を回収するためには、研修後に何らかの定着施策が必要です。

事前課題・研修後の職場での実践課題・上司との1on1・振り返りアンケートなど、研修を「点」ではなく「線」として設計しているかどうかが、効果の差を生みます。

失敗パターン⑤ 自社の文脈と切り離された「汎用コンテンツ」を使っている

市販の研修パッケージや、どの企業にも同じ内容で提供される汎用コンテンツを使った研修は、「一般論の学習」になりがちです。

受講者が「これは自社の話だ」と感じるためには、自社の業種・事業内容・排出構造・経営課題と結びついた事例や問いが必要です。製造業と金融業では、脱炭素への向き合い方もScope3の構造も全く異なります。

「どの企業にも使える内容」は、裏を返せば「どの企業にも刺さらない内容」でもあります。

なぜこれらの失敗が起きるのか:構造的な原因

5つのパターンに共通する根本原因は、**「研修の目的が知識の提供に置かれている」**ことです。

知識を届けることと、行動を変えることは、異なるアプローチを必要とします。

知識の提供が目的なら、講義形式・スライド資料・汎用コンテンツで十分です。しかし、脱炭素研修に求められているのは「社員が職場で脱炭素に関わる判断・行動をとれるようになること」のはずです。

その目標を達成するためには、研修の設計が「知識を与える」から「考える経験をつくる」に変わる必要があります。

具体的には次のような問いが設計の起点になります。

  • 受講者は研修を通じて、何ができるようになればいいのか
  • 受講者が「自分事」として考えるための問いや状況をどう用意するか
  • 研修後に職場で使える「何か」を残せているか

効果的な研修設計の3つの原則

原則① 「問いから始める」設計にする

「カーボンニュートラルとは何か」を教える前に、「あなたの職場で最もCO2を出しているのはどこだと思うか」を問う。知識を使って考える経験が、記憶への定着を深めます。

原則② トレードオフを体験させる

脱炭素は「良いことをする」話ではなく、「コストと環境と経済をどうバランスさせるか」という意思決定の連続です。その複雑さを体験として理解させる設計が、当事者意識を生みます。カードゲームのような体験型手法が有効なのは、この「意思決定の体験」を安全な環境で繰り返せるからです。

原則③ 研修後を設計に組み込む

研修当日を「始まり」として設計する。受講後に職場で何をするかを研修の中で決め、上司と共有し、一定期間後に振り返る。この「研修後の設計」が、研修効果を持続させます。

【印刷して使える】外部講師 発注前チェックリスト

外部講師発注前チェックリストのセクション区切り画像

以下のチェックリストを印刷し、候補講師との打ち合わせや資料確認の際にご活用ください。

● 専門知識の確認

確認項目
環境省・経産省など一次情報を正確に引用した発信(記事・コラムなど)があるか
カーボンニュートラル・脱炭素・Scope1〜3を使い分けて説明できるか
自社の業種・業態に関連した知識を持っているか

● 研修手法の確認

確認項目
ワークショップ・グループワーク・体験型など双方向の手法を持っているか
受講者が「考える」場面が設計に組み込まれているか
一方向の講義だけで終わらない構成になっているか

● カスタマイズ対応の確認

確認項目
自社業種・業態での研修実績、または近い業種の実績があるか
管理職・一般社員など受講者の階層に合わせた設計ができるか
研修前に自社の課題をヒアリングするプロセスがあるか
汎用コンテンツではなく、自社の言葉・事例で語れる準備があるか

● 研修後の定着設計の確認

確認項目
研修の到達目標を明確に設定・共有してもらえるか
受講後の職場での実践課題や振り返りの設計があるか
受講者アンケートや理解度確認など効果測定の手段があるか

● 信頼性の確認

 確認項目
導入事例・受講者の声が具体的に掲載されているか
講師自身の発信(記事・コラム・SNS)で知識と姿勢が確認できるか
問い合わせ前に研修の流れ・進め方の概要が確認できるか

このチェックリストを手に、発注予定の研修内容を見直してみてください。株式会社ジョブオールもその候補のひとつとして、お気軽にお問い合わせください。

参考一次情報

よくある質問

Q1. 脱炭素研修は何時間くらいが適切ですか?

A. 知識提供だけなら60〜90分でも可能ですが、「考える・体験する」設計を組み込む場合は最低でも2〜3時間が目安です。参加者が実際に意思決定を体験し、振り返る時間を確保することで、研修後の定着率が上がります。

Q2. 管理職と一般社員で研修内容を分けるべきですか?

A. 分けることをおすすめします。管理職には「なぜ脱炭素に取り組むのか・組織としての方針を部下に説明できるようにすること」、一般社員には「自分の業務との接点を見つけ、できることから行動すること」という到達目標の違いがあります。

Q3. 研修効果を上司や経営層に説明するにはどうすればいいですか?

A. 受講前後の理解度・意識変化アンケートの比較が最もシンプルな方法です。加えて「研修後に受講者が職場で取った行動の変化」を3ヶ月後に追跡できると、より説得力のある報告ができます。

Q4. 体験型研修は、専門知識のある社員には物足りなくないですか?

A. 体験型研修の価値は知識の習得ではなく、「意思決定の体験」にあります。知識がある社員ほど、トレードオフの複雑さや他者との判断の違いに気づく場面が増え、むしろ深い議論が生まれます。知識レベルが混在するグループでも有効に機能します。

今、研修スタイルが変わりつつあります。

一方通行の講義から、 「体験して、対話して、気づく」スタイルへ。

脱炭素カードゲーム研修は、
コニカミノルタ、SCREEN、JFEスチール労連、全トヨタ労連、など 大手企業が次々と採用しています。

あなたの会社でも、使ってみませんか。