はじめに:「研修は決まった、でも中身をどうしよう」——多くの企業のリアル

「脱炭素研修を実施することは、経営方針として決まった。でも、具体的に何をやればいいのかがわからない」

こうした声を、企業の研修担当者からうかがう機会が少なくありません。会社としての方針は決まった。予算も付いた。日時も仮押さえした。しかし、いざ「中身」となると、限られた時間で情報を整理する必要があり、どこから手をつければよいか手が止まってしまう——。

これは、決して珍しい話ではありません。むしろ、日本の多くの企業に共通する状況だといえます。この記事では、そうした企画担当者に向けて、脱炭素研修の内容をどう決めればよいのか、「実施した」という記録だけで終わらせないための考え方を整理します。

「研修だけは決まっている」のはなぜか——日本の現在地を客観視する

まず、なぜ多くの企業でこうした状況が生まれるのか。個人の能力の問題ではなく、日本社会全体の構造として捉えると見えてくるものがあります。

国連系の研究組織SDSN(国連持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)が2026年6月に発表した「持続可能な開発報告書2026」によれば、日本のSDGsの17目標のうち、目標13「気候変動に具体的な対策を」は、7年連続で最低評価となっています。目標5「ジェンダー平等」、目標14「海の環境保全」、目標15「陸の環境保全」と並び、「深刻な課題がある」分野として位置づけられました。(出典:SDGs市民社会ネットワーク「SDSN 持続可能な開発報告書2026 コメント」)

つまり、気候変動対策への日本社会全体の意識と行動は、国際的に見て遅れています。その社会の中で経営判断が行われ、研修の実施だけが先に決まる——中身が後回しになるのは、日本の構造上、自然な流れとも言えるのです。

大切なのは、この状況を「誰かが悪い」と責めることではなく、直視することです。そして、企画を任された立場としては、この構造の中でも「意味のある研修」を組み立てる工夫ができます。

「実施した」で終わる研修と、そうでない研修の違い

同じ「脱炭素研修を実施した」という結果でも、その中身には大きな幅があります。

形骸化しがちな研修の典型は、次のようなものです。

  • 講師が用意した汎用スライドを、90分ひたすら聴くだけ
  • 用語解説と統計データが中心で、自社の事業と結びつかない
  • 質疑応答の時間はあるが、誰も手を挙げない
  • 終わった後、参加者の記憶にほとんど残っていない

一方、中身のある研修は、次のような特徴を持っています。

  • 参加者の知識レベルに合わせて設計されている
  • 自社の業種・業務と結びつけて考える場面がある
  • 参加者自身が「考える」「話す」「動く」時間が確保されている
  • 終わった後、職場で何かを変えるきっかけになる

見た目上は同じ「研修を実施した」でも、後者は組織の中に何かを残し、前者はほぼ何も残しません。企画者にとっての分かれ道は、まさにこの設計の違いにあります。

研修内容を決めるときに押さえたい3つの視点

脱炭素研修の企画会議のイメージ

では、中身のある研修を組み立てるには、どこから考え始めればよいのでしょうか。企画担当者としてまず押さえたい3つの視点を整理します。

1. 参加者の知識レベルを正直に見積もる

最初のポイントは、参加者の実際の知識レベルを正直に見積もることです。企画側は、つい「これくらいは知っているはず」と想定を高めに置きがちですが、実態はそうでないことがほとんどです。

「カーボンニュートラルとは何ですか」「Scope3という言葉を聞いたことはありますか」——これらの問いに、参加者の半数が明確に答えられない状態から始まる、と想定するくらいが現実的です。

そのうえで、研修は「知識ゼロの人が置いていかれない設計」から始める必要があります。専門用語の羅列でスタートする研修は、この時点で参加者の大半を失います。

2. 自分ごと化させる仕掛けを組み込む

2つめの視点は、参加者が「自分の仕事や生活と、どうつながっているのか」を実感できる仕掛けを組み込むことです。

気候変動という大きなテーマは、ともすれば「地球規模の話」で終わり、参加者の中で「自分には関係ない」と処理されがちです。ここを乗り越えるには、参加者自身が意思決定する場面や、自社の業務に引き寄せて考えるワークが有効です。

一方通行の講義では、この「自分ごと化」はほぼ起きません。頭では理解しても、心が動かないためです。

3. 研修後の出口を設計する

3つめは、研修が終わったあと、参加者が職場に戻って何をするか、その「出口」を設計しておくことです。

「今日学んだことを、明日から現場で活かしましょう」で終わる研修は、たいてい何も残りません。そうではなく、「研修中にアクションプランを言語化する」「上長との共有シートを持ち帰らせる」「1か月後にフォローアップの機会を設ける」など、行動につながる仕組みを研修そのものに組み込んでおきます。

出口設計があるかどうかで、研修の投資対効果は大きく変わります。

座学とワークショップ、何が違うのか

参加型ワークショップの研修のイメージ

3つの視点を踏まえたうえで、実際の研修手法をどう選ぶか。大きく分けると、座学(講義形式)とワークショップ(参加型)の2つに分かれます。

座学は、正確な知識を体系的に伝えるには適しています。一方、参加者の「自分ごと化」や「行動変容」を促す力は弱い、というのが一般的な傾向です。

これに対してワークショップ型は、参加者自身が手を動かし、意思決定を繰り返し、他の参加者と対話することで、知識を「使える形」で身につけていきます。特に、体験型のゲームを用いた研修は、知識ゼロの参加者でも自然に議論に加われる設計になっているため、知識レベルにばらつきがある職場でも効果を発揮しやすい形式です。

企画担当者としては、「今回の研修で参加者にどうなってほしいか」というゴールから逆算して、この2つの形式のバランスを決めることになります。「知識を伝える」だけがゴールなら座学中心でよく、「行動を変える」まで踏み込みたいなら、ワークショップ的な要素を必ず組み込む必要があります。

予算・費用・講師選びとセットで考える

ここまで整理した内容の設計は、実際には予算・費用・講師選びと切り離せません。中身を決めるプロセスは、次の3つの記事とあわせて進めると、抜け漏れがなくなります。

内容・費用・講師の3つが揃って初めて、「実施した」で終わらない研修の準備が整います。

まとめ:「やることは決まった」からこそ、中身に本気を

脱炭素研修の実施が決まったが中身が決まらないことは「日本社会の現在地」というお話をさせていただきました。だからこそ、企画担当者としてできる工夫があります。

参加者の知識レベルを正直に見積もり、自分ごと化させる仕掛けを組み込み、研修後の出口を設計する——この3つの視点を押さえるだけでも、研修の中身は大きく変わります。そして、座学とワークショップ、どちらの手法をどう組み合わせるかを、ゴールから逆算して決める。

「やることは決まった」のなら、あとは中身に本気になるだけです。そこに、意味のある研修が生まれます。

株式会社ジョブオールでは、脱炭素をテーマにしたカードゲーム型の研修プログラムを提供しています。参加者の知識レベルを問わず、自然に議論に加われる設計になっており、「実施しただけ」で終わらない研修を目指す企画担当者の方に、多くご相談をいただいています。

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よくある質問

  1. Q. 参加者にほとんど知識がありません。それでも研修は成立しますか?

    A. 成立します。むしろ、参加者の知識がゼロに近い状態こそ、体験型のゲーム研修が力を発揮する場面です。専門用語の暗記ではなく、参加者自身が意思決定を繰り返す設計にすることで、知識ゼロからでも「なぜそうなるのか」を体感的に理解できます。

  2. Q. 企画側の知識がまだ深くない段階でも、進められますか?

    A. 進められます。企画側が知識を深めている途中の段階でも、研修設計の経験を持つ講師と組めば、内容の骨格は組み立てられます。企画側の役割は、自社の業種・受講者層・目的を正確に伝えることです。専門知識の部分は講師側が補完します。

  3. Q. 研修時間はどのくらい確保すればよいですか?

    A. 目的により幅がありますが、初回の導入研修であれば2〜3時間の単発プログラムが一般的です。参加者の階層別に分ける場合や、行動変容まで踏み込みたい場合は、複数回に分けた設計にすることもあります。

  4. Q. 研修の効果はどう測ればよいですか?

    A. 受講前後のアンケート(理解度・意識の変化)の比較が最もシンプルな方法です。加えて、研修後に参加者が職場で何を実行したかという行動変容の記録があると、次年度の予算交渉や経営層への報告にも使えます。効果測定の設計は、講師と事前に相談しておくことをおすすめします。

参考情報

・SDGs市民社会ネットワーク「SDSN『持続可能な開発報告書2026』へのコメント」